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BYTEインタビュー、リチャード・ストールマンと

リチャード・ストールマンがBYTEの編集者とかれのパブリック・ドメインのUnix互換ソフトウェア・システムについて議論したものです (1986年7月)。


リチャード・ストールマンは、おそらく、現在までにもっとも大望のある自由ソフトウェア開発プロジェクト、GNUシステムを企てています。1985年3月号のドクター・ドッブズ・ジャーナルに発表された、かれのGNU宣言において、ストールマンはGNUを「わたしが誰にでも“フリー”に渡し、誰もが使えるように、わたしが書いている完全にUnix互換のソフトウェア・システムです…一旦、GNUが書かれたら、すべての人が良いシステムソフトウェアを、ちょうど空気のように自由に得ることが出来るのです。」と述べています。(GNUはGNUはUnixではない(GNU's Not Unix)の頭字語で、gは発音されます。)

ストールマンはEMACSの作者として広く知られています。EMACSは、MIT人工知能研究所でかれが開発した強力なテキスト・エディタです。GNUプロジェクトの一部として製作された最初のソフトウェアが、新しいEMACSの実装であったのは偶然ではありません。GNU EMACSは、すでに、どんな対価を払ったとしても、現在利用可能なもので最高のEMACSの実装である、との評判を勝ち得ています。

BYTE: わたしたちは、1985年3月号のドクター・ドッブズ・ジャーナルのあなたのGNU宣言を読みました。それから何が起こりましたか? それが本当に始まりでしたか、そしてそれからどのように進みましたか?

ストールマン: ドクター・ドッブズの出版がプロジェクトのはじまりではありません。プロジェクトを開始する準備ができたとき、コンピュータ・メーカに資金を求めるプロポーザルとして、わたしはGNU宣言を書きました。コンピュータ・メーカは関係することを望まなかったので、わたしは資金を求めるのに時間を費やす代わりにコードを書くのに時間を使うべきだと決めました。宣言は書いてから約一年半後に出版されました。わたしがようやくGNU EMACSの配布をはじめた時です。その時から、GNU EMACSをより完璧にし、もっとたくさんのコンピュータで動くようにしました。加えて、最適化Cコンパイラと、Cのプログラムを実行するのに必要なほかのソフトウェアをだいたい終えています。これにはソースレベル・デバッガも含まれ、これにはUnixのほかのソースレベル・デバッガにはないたくさんの機能が含まれます。たとえば、デバッガ内に便宜変数を持ち、値を保持することができます。また、プリントアウトしたすべての変数のヒストリを持ちます。これで、リスト構造を追うのが、とても便利になります。

BYTE: エディタを終えて、今、それが広く配布されています。そして、まもなくコンパイラを終えようとしています。

ストールマン: この10月に終えるだろうと考えています。

BYTE: カーネルについてはどうですか?

ストールマン: MITで書かれ、最近、一般にリリースされたカーネルを使ってはじめようと、今、計画しています。そのカーネルにはわたしの使ってみたいアイデアがあるようです。このカーネルはTRIXと呼ばれ、リモート・プロシジャ・コールをベースとしています。Unixのたくさんの機能のためには、互換性を加える必要があります。現在、それはないので。まだ作業は始めていません。カーネルの作業に行く前にコンパイラを終えるつもりです。ファイルシステムを書き直す必要もあると考えています。ディスクの構造が常に一貫するようにブロックを正しい順番で書かせることによって、フェールセーフにすることを考えています。そうしたら、バージョン番号を足したいと思います。通常Unixを使っている人々の方法とバージョン番号を調和させる複雑な方式をわたしは有しています。バージョン番号なしでファイル名を指定することができなくてはなりません。しかし、明示的なバージョン番号を指定することもできなくてはいけません。このどちらもが、この機能の存在を取り扱うように変更されていない普通のUnixプログラムと動く必要があります。わたしはこうする方式を有していると考えていて、実際に動くかどうかは、あと、試してみるだけです。

BYTE: GNUがシステムとしてほかのシステムよりどのように優れているかについて、簡潔な説明をいただけませんか? わたしたちは目標の一つがUnixと互換のものを製作することを知っています。しかし、ファイルシステムのエリアでは、少なくとも、あなたはすでに、Unixを越えてそれよりも良いものを製作すると言っています。

ストールマン: Cコンパイラはより良いコードを生成し、速く実行するでしょう。デバッガはより良いでしょう。一つずつに、改良する方法を見つけたり、見つけられなかったりします。この質問について、一つの回答はありえません。ある程度は、わたしは再実装の利益を得ています。それは多くのシステムをとても良いものにします。ある程度は、この分野に長くいて、多くのほかのシステムについて仕事をしてきたからです。ですから、わたしは傾注すべきたくさんのアイディアを有しています。より良くなるであろう一つの方法は、現実的にシステムのすべてがどんなサイズのファイル、どんなサイズの行、どんな文字がそこに現れても、動くようにすることです。Unixシステムはこの点についてまったくダメです。これは、任意の制限を持つべきではない、というソフトウェア工学の原則としてなにも新しいものではありません。しかし、いつでもそれを入れることがUnixを書く標準のプラクティスになっていました。おそらく、とても小さいコンピュータのためにそれを書いたからでしょう。GNUシステムの唯一の制限は、それがあまりにも大きなデータについて仕事をしようとして、すべてを保持できる場所がないためにプログラムがメモリを使い果たした時、だけです。

BYTE: 仮想記憶を得れば、ほぼ、その限界には達しないわけですね。単に、その解決策を見出すのに、ひどく時間がかかるだけだ、と。

ストールマン: 実際は、そういった制限には、解決策を見出すのにかかる長い時間よりもだいぶ前に、当たってしまう傾向があるのです。

BYTE: どんなタイプのマシンと環境で具体的にGNU EMACSを走るようにしたかについて、教えてくれませんか? 今、VAXで動きますが、パーソナル・コンピュータのどんな形態にでも移ってきましたか?

ストールマン: パーソナルコンピュータと言ったときに、あなたがなにを意味するのか、わたしには明らかではありません。たとえば、Sunはパーソナルコンピュータでしょうか? GNU EMACSは少なくとも1メガバイト、好ましくはもっとたくさんのメモリを必要とします。通常は仮想記憶があるマシンで使われます。いくつかのCコンパイラの様々な技術的な問題を除けば、ほとんどどの仮想記憶を持ったマシンでも、だいたい最近のUnixのバージョンが動いているならば、GNU EMACSは動くでしょう。現在、ほとんどのもので動いています。

BYTE: 誰かがアタリやマッキントッシュに移植しようとしましたか?

ストールマン: Atari 1040STにはまだ十分なメモリがありません。次期のアタリのマシンでは動くのではないかと考えています。また、わたしは、将来のアタリはなんらかのメモリ・マッピングの形態を有するだろうとも考えています。もちろん、今日、一般に流行っているコンピュータの類で動くようにソフトウェアをデザインすることはありません。わたしがこのプロジェクトをはじめたとき、それが数年かかることをわたしは知っていました。ですから、わたしは現在の制限された環境で動くようにするための追加の挑戦をすることによって、ダメなシステムを作ることを望まないことに決めました。そうではなく、わたしは、もっとも自然で最適である方法でそれを書いていくことに決めたのです。自信を持って言えますが、数年もすれば、十分なサイズのマシンが一般的になるでしょう。実際、メモリサイズの増加はとても速いのに、ほとんどの人々が仮想記憶を使うのにのろのろしていることを、わたしは驚きます。これはとても重要だとわたしは考えます。

BYTE: シングル・ユーザのマシンにそれが必要であることについて、人々はそのように考えていないと、わたしは思いますが。

ストールマン: シングル・ユーザは、シングル・プログラムを意味しないことを、かれらは理解していません。たしかに、どんなUnixライクなシステムでも、あなた一人だけがいる場合でさえも、同時にたくさんの異なるプロセスを実行することができることが大切です。十分なメモリがあれば非仮想記憶マシンでGNU EMACSを動かすことができるでしょう。しかし、GNUシステムのほかの部分、あるいはUnixシステムを動かすことはあまり良くできないでしょう。

BYTE: GNU EMACSでどれくらいのLISPがありますか?LISPを勉強するためのツールとして、それを使うことは有用かもしれないと、思いついたのですが。

ストールマン: たしかに、そうすることができます。GNU EMACSは完全な、とても強力ではありませんが、LISPシステムを持ちます。エディタのコマンドを書くには十分に強力です。それは、たとえば、Common Lispシステムとは比べられるものではありませんが、システム・プログラミングのために実際に使用することができるくらいのもので、LISPに必要とされるすべてのものを持っています。

BYTE: 実際に動く環境を配布する時はいつだろうと予測がありますか? わたしたちのマシンやワークステーションにそれを入れて、あなたが配布する以外のコードなしで、実際にもっともな作業をすることができるような環境です。

ストールマン: それを言うのは、ほんとに難しいことです。一年で起こるかもしれないが、もちろん、もっと長くかかるかもしれません。もっと短くなるかもしれませんが、もはやそれはありそうにないことです。一月か二月でコンパイラは終えられると考えています。ほんとうにわたしがしなくてはいけない、ほかの大きな作業は、カーネルだけです。当初、わたしはGNUは2年間くらいかかるだろうと予測していましたが、既に2年半が経ち、まだ終了していません。この遅れの理由の一部は、一つのコンパイラにたくさんの時間を費やし、それがデッドエンドを迎えたことにあります。それを完全に書き直さなければいけなかったのです。もう一つの理由は、GNU EMACSにとてもたくさんの時間を費やしたことです。もともとは、わたしは、そうする必要は全くないと考えていたのです。

BYTE: あなたの配布の方法について教えてください。

ストールマン: ソフトウェアやマニュアルをパブリック・ドメインにはしません。理由は、すべてのユーザが共有する自由を手にすることを確実にしたいからです。わたしが書いたプログラムの改良版を作成した誰かがそれをプロプライエタリとして配布するのを望みません。そういったことが決して起こり得ないようにしたいのです。これらのプログラムに対して自由な改良を奨めたいので、そうするのに最良の方法は、あるひとが改良を不自由にする誘惑を取り除くことです。はい、一部の人は改良をすることを控えるでしょう。しかし、ほかのたくさんの人は同じような改良を行い、それを自由とするでしょう。

BYTE: そして、それを保証することについて、どうしますか?

ストールマン: プログラムに著作権を設定し、人々にプログラムのコピーすることと変更することの明確な許可を与え、そうする場合には、しかしながら、わたしが用いたのと同じ条項で配布するという条件のもとだけとする、という告知を付けています。わたしのプログラムにあなたが行う変更を配布する必要はありません。自分自身のためだけに行うことは可能で、誰にも渡す必要はないし、言う必要もありません。しかし、ほかの誰かに渡す場合、わたしの使う同じ条項で行わなければならないのです。

BYTE: Cコンパイラから出力される実行コードについてなにか権利を得ようとしますか?

ストールマン: 著作権法は、コンパイラからの出力に、わたしが著作権を主張することを認めないので、それについて何か言う方法をわたしに与えません。実際、わたしはそうしようとしません。どのコンパイラを使ったとしてもプロプライエタリの製品を開発する人々に、わたしが共感することはないですが、かれらがこのコンパイラで開発することを止めようとすることが特に有用とは考えられないので、そうしようとはしません。

BYTE: 人々があなたのコードを使ってほかのことをするのに、あなたの制約は同じように適用されますか?

ストールマン: はい、かれらがどんなサイズの部分でも変更したものを取り込む場合はそうなります。もし、たとえば2行のコードの場合、それはなんでもないでしょう。著作権はそれには及びません。根本的には、この条件を以下のように選択したのです。つまり、まず最初に、著作権があり、これは、すべてのソフトウェア秘蔵者が全員に対して何かをすることを止めるのに使うものですが、その権利の一部をあきらめるという告知を追加します。ですから、条件は著作権が適用されるものについてだけ述べています。この条件にあなたがしたがうべき理由は、法律のためである、と、わたしは考えません。あなたがしたがうべき理由は、正しい人は、ソフトウェアを配布するとき、ほかの人々にさらに共有するように推奨するから、です。

BYTE: ある意味、あなたは、こういった思考へと、人々をそそのかしているわけですね。かれらが使うことができるが、しかし、あなたの理念を受け入れるときだけに使えるという、興味深いツールすべてを提供して。

ストールマン: そうです。ソフトウェアの秘蔵者が設置した法のシステムを、かれらに対抗して使う、というように見ることもできるでしょう。わたしは、それを一般公衆をかれらから守るのに使っているのです。

BYTE: 製造業者がプロジェクトに資金を提供したくないという状況では、GNUシステムができたとき、それを誰が使うと思いますか?

ストールマン: わかりません。しかし、重要な問題ではありません。わたしの目的は、プロプライエタリなソフトウェアがもたらす連鎖を人々が拒否することを可能にすることです。わたしは、そうしたい人々がいることを知っています。今、それを気にしないほかの人がいるといっても、それはわたしの関心の外です。そういう人とかれらが影響する人々には、少々、悲しいことではありますが。今、現在、プロプライエタリなソフトウェアの条項に不興を感じる人は、行き詰まってしまい、コンピュータを使わないという選択以外はない、と感じるでしょう。わたしはそういう人に、快適な代替案を与えようとしています。

ほかの人はGNUシステムを単に技術的に優れているために使うでしょう。たとえば、わたしのCコンパイラは、わたしがこれまで見てきた、どんなCコンパイラと、同じくらいの良いコードを生成します。そして、GNU EMACSは商用の競争相手よりも、とても優れていると一般的にみなされています。GNU EMACSは誰からも資金提供を受けておらず、皆が使っているのです。わたしは、ですから、たくさんの人々が、GNUシステムのほかの部分を、技術的な優位性のために使うだろうと考えるのです。しかし、たとえわたしが技術的に優れたものにすることを知らなかったとしても、GNUシステムを行っているでしょう。なぜなら、わたしは、それを社会的に良いものにしたいからです。GNUプロジェクトは、実に、社会的プロジェクトです。それは技術的方法を、社会に変革をもたらすために使っているのです。

BYTE: それでは、人々がGNUを採用することがあなたにとってだいぶ重要だということでしょう。このソフトウェアを製作し、人々に贈ることは、単にアカデミックな演習ではない、と。あなたは、それがソフトウェア産業が稼働する方法を変える、と望むわけですね。

ストールマン: はい。ある人々は、魅力的な会社のロゴがないので誰もそれを使いはしない、と言います。ほかの人々は、それは大変に重要で皆が使いたくなると考える、と言います。これから一体何が起こるかについて、わたしは知る由もありません。自分の属するこの分野の醜さを変えようとするのに、わたしは、ほかのどんな方法も知りません。ですから、これが、わたしがやらなければならないことなのです。

BYTE: その意味について述べてもらえませんか? あなたは、これが重要な政治的かつ社会的声明だとはっきりと感じているようです。

ストールマン: これは変革です。わたしは、知識と情報一般に人々がアプローチする方法を変えようとしています。知識を所有しようとすること、それを人々が使用する許可をコントロールしようとすること、または、人々がそれを共有することを禁止しようとすることは妨害行為だと、わたしは考えます。そういったことは、社会全体を貧しくする代償を払って、それを行う人を利する行為です。ひとりの人が1ドルを得るのに、2ドルの富を破壊することです。わたしは、良心ある人は、そうしなければ死んでしまうかもしれない場合を除いて、この種のことを行わないと思います。そして、これを行う人々は、もちろんのことながら、かなり裕福であり、かれらはあくどい、と結論せざるを得ません。わたしは、自由ソフトウェアを書くことや、ほかの人々にそれを使うのを奨めることで、人々が報酬を得るのを見たいと思います。人々がプロプライエタリなソフトウェアを書くことで報酬を得るのを見たいとは思いません。なぜなら、それは実に社会への貢献ではないからです。資本主義の原則は、人々がものを生産することによってお金を得て、よって、言わば自動的に、有用なことを行うことが推奨されるという考えです。しかし、これは、知識の所有に当てはめたときには機能しません。実に有用でないことが推奨され、実に有用なことは推奨されないのです。情報は、車やひとかたまりのパンのような物質的ものとは違うと言うことが重要だとわたしは考えます。なぜなら、誰もそれを止めようとしなければ、人々は、自分自身で、それをコピーし、共有し、変更し、自身のためにより良くすることができるのです。これは、人々が行う有用なことです。これはひとかたまりのパンでは成り立ちません。ひとかたまりのパンがあってもう一つ欲しい場合、パンの複製機に入れるだけ、とはいきません。複製機で、もうひとつのパンを作ることはできず、最初のパンを作ったのとすべて同じ段階を踏まなければならないのです。ですから、人々がその複製を作ることを許可されるかどうかは、見当違いです。それは不可能です。

本は最近まで印刷機で印刷されるものでした。自分自身で手で複製を作ることは可能でしたが、それは、印刷機を使うよりもたいへんな労力を要することなので現実的ではありませんでした。手で作ったものは、すべての用途と目的に対して、あまり魅力的ではないものとなるので、大量生産以外に本を作るのは不可能であるとみなせました。ですから、著作権が読書界から自由を奪うことは、実際に、なにもなかったのです。本を購入した人ができることで、著作権によって禁止されることは、なにもありませんでした。

しかし、コンピュータ・プログラムの場合は違います。カセット・テープの場合も違います。本の場合も、今は、一部、違いますが、ほとんどの本の場合は、なお、当てはまり、コピーするのは、買うよりも高くてたくさんの労力がかかり、結果はなお魅力的ではありません。現在、著作権が無害で受け入れられていた状況から、著作権が破壊的で認められないものになってしまう状況の端境期に、わたしたちはいるのです。ですから、「海賊」と中傷される人々は、実際は、これまでは禁止されていた、有用なことを行おうとする人々です。著作権法は、人々が、自分自身のために、ある情報の使用に関して完全にコントロールを得られるよう、全体として設計されています。しかし、情報が一般公衆にアクセス可能であることを確実にし、一般公衆から奪おうとするほかの人を禁止したい、という人々を助けるようには設計されていません。公共によって所有されている作品のクラスを、法律は識別すべきである、と、わたしは考えます。それは、公園がゴミの缶の中で見つけられるものとは違うのと同じ意味で、パブリック・ドメインとは違います。誰もが持っていくことができるためにそこにあるのではなく、誰もが使うためにそこにあり、誰も邪魔をしないために、あるのです。公共によって所有されている何かの派生作品を奪われた場合には、一般公衆の誰もが、それについて訴えることができるべきです。

BYTE: しかし、海賊は、その知識をもっと良いものを製作するのに使いたいからではなく、プログラムを使いたいからプログラムのコピーを入手することに関心があるのではないでしょうか?

ストールマン: それが重要な違いだとは思いません。より多くの人々がプログラムを使うことは、そのプログラムが社会により貢献することを意味します。パンがひとかたまりあって、一度食べられるか、何百万回食べられるか、です。

BYTE: 何人かのユーザは商用ソフトウェアを買ってサポートを得ます。あなたの配布の仕組みはどのようにサポートをしますか?

ストールマン: そのようなユーザは誤解させられていて、明確に考えていないのではないか、と思います。たしかにサポートがあることは有用です。しかし、それがソフトウェアを販売したり、ソフトウェアをプロプライエタリにすることとどのように関係するのかを考え始めるとき、混乱してしまうのでしょう。プロプライエタリなソフトウェアが良いサポートを得る何の保証もありません。販売業者がサポートを提供すると言うだけでは、それが良いものであることを意味しません。そして、かれらは廃業してしまうかもしれません。実際、人々はGNU EMACSには商用のEMACSよりも良いサポートがあると考えています。理由の一つは、ほかのEMACSを書いた人々よりもわたしがおそらく良いハッカーだということでしょうが、ほかの理由は、誰もがソースを有し、それで物事を行う方法を見つけ出すことに関心があるたくさんの人々がいて、わたしからサポートを得る必要がない、ということでしょう。人々がわたしに報告するバグを修正し、次のリリースにそれを含めるという、無料のサポートだけでも、人々に、サポートの良いレベルを与えてきています。あなたはあなたのために問題を解決する誰かをいつでも雇うことができ、ソフトウェアが自由であれば、サポートの競争市場があるのです。誰でも雇うことができます。EMACSと一緒にサービスのリストを配布しています。人々の名前と電話番号、サポートの提供料金を掲載しているリストです。

BYTE: かれらのバグ・フィックスを集めますか?

ストールマン: というよりも、かれらはわたしに送ってきます。リストに掲載されたい人々全員に、かれらのどんな顧客に対しても、決して秘密にすることを要求しない、と保証するよう、お願いしています。言われたことが何であっても、あるいは、そのサポートの一部としてGNUソフトウェアになされたいかなる変更であってもです。

BYTE: つまり、かれらがある問題についてほかの誰かが知らない解決策を知っていることにもとづいて、サポートを提供する競争を人々にさせることはできない、のでしょうか?

ストールマン: できません。かれらは、賢くて、あなたの問題に対する解決策を見つけることができるであろうこと、あるいは、既によくある問題についてより理解していること、もしくは、どうしたらいいかをあなたに説明する方法を良く知っていること、にもとづいて、競争することができます。これが競争するすべての方法です。より良くするように頑張れますが、競争相手を積極的に邪魔をすることはできません。

BYTE: それは車を買うのに似ていると思います。サポートや継続した保守のためにオリジナルの製造者に戻ることを強制されません。

ストールマン: あるいは家を買うことです。もし、あなたの家の問題を修繕することができる人が、最初にそれを建てた業者に限るとしたら、どうでしょう? これが、プロプライエタリなソフトウェアに伴う、ある種の強要なのです。人々はUnixで起こった問題を話します。製造業者がUnixの改良版を売るので、かれらは、修正を集める傾向があり、バイナリ以外は出さないのです。結果は、バグは実際は修正されないのです。

BYTE: それらはすべてバグを独立に解決しようとする重複した努力ですか。

ストールマン: はい。これは、社会の面からプロプライエタリな情報の問題をとらえるのに役立つ、もう一つのポイントです。賠償保険の危機について考えてください。いかなる補償を社会から得るにも、負傷したある人は弁護士を雇ってお金をその弁護士と分け合わなければならないのです。これは、事故の犠牲者の人々を助けるのに、馬鹿げて不効率な方法です。そして、人々がビジネスをかれらの競争から取り去ろうと、押し合いへし合いしていることをいつも考えましょう。ペン自身よりもコストがかかる大きな厚紙のパッケージのペンについて考えましょう。ただ、ペンが盗まれないようにしているのです。すべての街角に無料のペンを置くほうがよっぽど良くないでしょうか? そして、交通の流れを妨害するすべての大きな料金所を考えましょう。これは巨大な社会の現象です。人々は社会を妨害することでお金を得る方法をみつけます。一度、かれらが社会を妨害できれば、かれらは、支払いを受けることができ、そのまま人々を放っておくのです。情報を所有することに固有の浪費は、どんどん重要となってくるでしょう。そして、ロボットによってすべてがなされるので生活のためには誰も実際に働かなくてよいユートピアと、わたしたちのこの世界のような、誰もが多くの時間を隣の仲間のやっていることを重複することに費やす世界、その違いが最後にははっきりするでしょう。

BYTE: ソフトウェアの著作権表示をタイプすることのように。

ストールマン: 全員を監視して、禁止されたコピーは何であっても有しないよう確実にしたり、それがプロプライエタリであるので人々が既に行ったすべての仕事を重複して行う、ことのように、です。

BYTE: 冷笑家は、あなたがどのように生計を立てているか疑問視します。

ストールマン: コンサルティングです。わたしがコンサルティングをするときは、コンサルティングの仕事のために書いたものを引き渡す権利を常に留保します。また、わたしは、わたしが書いた自由ソフトウェアのコピーとほかの人が書いたいくつかを郵送することで、生計を立てることもできます。たくさんの人々がGNU EMACSのために150ドルを送ってきますが、今、このお金はわたしが開始したフリーソフトウェアファウンデーションに行きます。ファウンデーションはわたしに給与を支払いません。これは利益相反になるかもしれないからです。その代わり、ファウンデーションはGNUに働くほかの人々を雇います。わたしがコンサルティングで生計を立てられる限り、これが一番の方法です。

BYTE: 公式GNUテープには現在何が含まれますか?

ストールマン: 現在、テープにはGNU EMACS (ひとつのバージョンですべてのコンピュータに適合します)、Bison (YACCの代替プログラム)、サスマン教授の非常に簡素化したLISPの方言である MIT Scheme, そしてRogueに似た地下探検ゲームのHackです。

BYTE: 印刷されたマニュアルはテープと一緒に来ますか?

ストールマン: いいえ。印刷されたマニュアルはそれぞれ$15ドルで、自身でコピーして良いです。このインタビューもコピーして共有してください。

BYTE: どうやってそのコピーを入手できますか?

ストールマン: Free Software Foundation, 675 Massachusetts Ave., Cambridge, MA 02139宛に手紙を書いてください。

[現在(2005年から)の住所はこちら:
Free Software Foundation, 51 Franklin St, Fifth Floor, Boston, MA 02110-1301, USA.
Voice: +1-617-542-5942
Fax: +1-617-542-2652]

BYTE: GNUシステムが完了したとき、なにをしますか?

ストールマン: わからないな。時々、わたしは、わたしがしつづけるのは、ソフトウェアのほかのエリアで同じことをするか、と考えます。

BYTE: では、これはソフトウェア産業への強襲シリーズの第一弾に過ぎない、というわけですか?

ストールマン: そう願っています。しかし、たぶん、わたしは生活するためだけに少しの時間働き、安楽な暮らしを生きると思います。高価な暮らしをする必要はありません。残りの時間は、興味深い人々を見つけてぶらついたり、どうやったらよいか知らないことを学んだりするでしょう。